コレクション展「躍動する個性ー大正の新しさ」@神奈川県立近代美術館 葉山
神奈川県立近代美術館 葉山
海を望む場所にある神奈川県立近代美術館 葉山。
ここに所蔵されているコレクション展「躍動する個性ー大正の新しさ」を観に行きました。
神奈川県立近代美術館はかつて著名な美術評論家、土方定一氏が長く館長を務めておられ、以後もそうそうたる評論家の方々が館長をされたせいでしょうか。近代日本の作家のコレクションが充実しているところです。
もともとは鎌倉八幡宮の横にあった建物が老朽化のため閉館し、現在は葉山が主軸となって運営されています。
コレクション展「躍動する個性ー大正の新しさ」
展覧会のテーマである大正時代は、この美術館の中でも得意とする分野です。神奈川県にゆかりのある岸田劉生をはじめとして、大正時代は、明治時代に開花した洋画が飛躍し、自由闊達な時代の雰囲気と合わせ、個性的な作家が活躍した時代です。
本展では、岸田劉生《童女図(麗子立像)》(1923年)や佐伯祐三《パストゥールのガード》(1925年)をはじめとした58点が展示されていました。
私は、夭折した作家たち、例えば萬鉄五郎、村山槐多、靉光などの生涯に興味を持っていますが、その中でも特に短い20年でこの世を去った関根正二を追いかけています。
なぜ魅かれるのでしょうか。最近の私は関根正二のことばかり考えていて、まあそれはジャニーズの若い男の子に胸キュンしているおばさんのごとくです。
この展覧会に出かけたのも関根の作品が6点ほど出ていたからです。
永遠の春
今回観た関根の素描《永遠の春》(1915年)は興味深いものでした。
どこかで見たポーズだ…と思いながらも、すぐに気づかなかったのですが、上野の国立近代美術館にあるロダンの《永遠の春》ですね。
松方幸次郎が美術収集を始めたのは1916年頃から。この作品が松方所蔵になったのはいつからでしょうか。いずれにせよ1919年に没した関根はたぶんこれを観てはいないでしょう。
美術書などでこの彫刻を目にし、心惹かれてスケッチをしたであろう16歳の関根に、実物を見せてあげたかったと思います。
この素描は裏表にかかれており、裏側は《暗き内に一点の光あり》という作品。
素描に添えて「暗き内に一点の光あり 其れを俺れは見て居る 神を知る人は或る感情に俗界に通俗な風姿方をする此れはだ作」と書き込まれています。
完成された作品は、作家が勝負に出た戦闘態勢の姿だとしたら、素描は家でくつろいだり、苦悩する素の姿。
好きな作家の素描は、たまらないですね。