関根正二の生をたどって -2- 日比谷公園
《信仰の悲しみ》
関根正二が第5回二科展にて樗牛賞を受賞した《信仰の悲しみ》。
大原美術館蔵 関根19歳(1918)の作。油彩・画布。70.0×100.0。
『本作について関根は、東京の日比谷公園で休んでいる時、公衆トイレから、こうした人々の列が金色に輝きながら出現したとし、こう述べている。
「朝夕孤独の淋しさに何物かに祈る心地になる時、ああした女が三人又五人、私の目の前に現れるのです」』
OHARA MUSEUM of ART ― 作品紹介>主な作品の紹介>日本の絵画と彫刻>関根正二 大原美術館作品の紹介ページより
このことから関根正二は「幻視の画家」と呼ばれることもあります。
友人である小説家・久米正雄の『鼻を切ったS君』という短編に、その直前の関根の様子が細かく描かれています。
それを読むと蓄膿症の手術後の療養時であったことと失恋の痛手が「幻視」を呼んだのではないかと想像されます。
なにぶん天才肌の19歳の少年。感受性が高じて不安定な精神状態に陥ることはありがちではないでしょうか。
この時期何度も足しげく訪れたという日比谷公園は、関根の生涯の中でも大切な場所に思え、私も出かけてみることにしました。
幻視の舞台は?
現在日比谷公園には6か所のトイレがあります。このどこかで女性たちの幻を見たのでしょうか。
トイレは配管のこともあるから、建物は新しくしても場所はあまり移動しないのではないでしょうか。
すべてのトイレを回ってみました。
①の場所
関根の家の方向からたぶん一番近いであろうトイレ。公園に入り込んですぐ幻を見たのでしょうか。
②の場所
③の場所
②と③は道を隔てて向かい側に建てられています。開放的で開けた感じの場所です。現在の雰囲気では生活感が強く現実的な場所です。
④の場所
草地広場の中にあるトイレ。木立の中に芝生があり、遊具が置いてある広々とした空間。ぞろぞろと女性たちが列をなしているイメージが湧きそうな場所です。
⑤の場所
現在ではあまり雰囲気を感じない場所。いわゆる公園のトイレ。
⑥の場所
大きな大きなヒマラヤ杉が手前にある場所。この木々は当時もあったのでしょうか。うっそうとした木々が霊的と言えるかもしれません。
6か所もトイレばかり撮影している変なおばさん。不審者として職務質問されなくて良かったです。(笑)
関根は、どこで金色に輝く人々を見たのでしょうか。
せっかく日比谷公園まで来たので、老舗「松本楼」で古き良き味ビーフカレーをいただきました。この「松本楼」は関根が3階の屋根裏に忍び込んで警察に拘留されてしまったという曰く付きの場所でもあります。
松本楼外観