Art Fair Tokyo 2021② 絵画編
前記事に引き続いてArt Fair Tokyo2021のレポです。
本記事は絵画編となります。
三宅信太郎さんのユーモラスな動物たちは、身近に置きたいアートとして最適かもしれません。
三宅さんはアール・ブリュットにも影響された作家さんだとのことで、偏執的な模様があったり、通常では見ないであろう方向から見た動物には、そういう部分が現れているのかもしれません。
ただカワイイというよりも、少し毒を帯びた感じの動物たちの視線は、こちらを見透かしているようにも感じるものです。
川内さんの作品は、どこかに必ずセクシャルなニュアンスがあって、ドキドキするほど官能的です。
これといった具体的なものが具体的に描かれているわけではないけれど春画を見るような恥ずかしさがあると私には思えます。
本作はそれらから比べると毒が少ない感じです。
これなら堂々とリビングに飾れる?
そう思わせるところでどこか川内さんにしてやられているところがあるのかもしれません。
左の作品のマテリアルが面白かった。
トタンの凸凹を活かして、絵の具を押さえつけている感じです。
たぶん絵具が塗られている平面にトタンを押し付けて着色しているんじゃないかなぁ。
こういう質感は初めて見たような気がして新鮮でした。
作品を見ていたら、甲斐さんからお声をかけていただいて作品についてお話をしていただきました。
この作品は水蒸気やら空気やらを取り込んで、またそれを発している植物の状態を表しているそうです。
植物はただ佇んでいるように見えるのですが、私もガーデニングをしていて感じることは、植物の呼吸やらの生きようとする貪欲さがすさまじいいきものです。
そんな感じが伝わってくる作品でした。
次に紹介する2人の作家さんの作品は、「本当に欲しい!」と思った方たちです。
東さんの作品は、大胆なタッチと明るく優しい色彩が特徴です。
ほのぼのとした人の表情に包容力を感じるのですが、その反面なんとなくもの悲しさも感じさせるところが、一筋縄でいかない、そしていつも飽きずに眺められそうな気がして、身近に置いておきたくなるところでしょうか。
なんと初日に完売してしまったそうです。
平子さんの作品には、樅木にトナカイの角が生えたような男の人が登場します。
私は勝手に「クリスマス男」と名付けていたのですが。
自然破壊への警鐘やクリスマスという特別感などが表現されているのでしょうか。
平子さんの小さな作品をいくつか家のあちこちに飾って、その前を通るたびに「ふふっ」とほほ笑んで日々を豊かに過ごしたい。
そんな気持ちにさせる作品たちです。
アート・フェアというのはこういう雰囲気なのかという初体験でした。
どのブースに人が集まり、人々がどんな感想を述べているのかを小耳にするのも楽しいし、なにより作家さんと直接話ができたり、作家さんを日ごろ支えているギャラリーの方のお話を聞くのもとても楽しい。
そう考えると、言葉は悪いけれど美術館とは少しカビの生えた遺品置き場のように思えてしまいました。
それくらいアート・フェアが生き生きとした場だったということです。
また付け足しのお話ですが、このフェアで岡本神草の小さな軸装がさりげなく置かれていたり、100年ぶりに見つかった村山槐多の木炭が誰にも目にとめられず素通りされていたりしました。
近代絵画を専門としている私としては、ちょっと残念な、しかしこれが現況なのかなあなどと現実を見た思いでもありました。