モンドリアン展 @SOMPO美術館
かつてモンドリアンの絵の様なドレスがあったな、と調べてみたら
1965年のイブ・サンローランの作品「モンドリアン・ルック」のことだった。
黒い直線に赤・青・黄の四角。
モンドリアンといえばまさにこれ。
今回の展覧会に展示された下の作品も一連の作品の一つだけれど、《大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション》というタイトルだと、モンドリアンが何を考えてこの作品を描いたのか、そしてどうしてまたこんな線や四角を描こうとしたのかが全く分からない。
SOMPO美術館で行われた「モンドリアン展」を見ればなにかヒントを得られるのだろうか。
モンドリアンがこの線と四角で構成された作品を確立したのは1921年頃だという。
その当時50歳くらいだ。
そこに至る迄の彼の若き頃、どんな絵を描いていたかというのは本展で、良く分かる。
例えば30歳のころ描いていたのが《ダイフェンドレヒトの農家》みたいに、農村や牛といったバルビゾン派みたいな土臭い、ダークな色調の風景画だった。
こんな絵から画家人生が始まったのかなと思うと意外な感じだ。
でもちょっとここで彼らしい特徴が見受けられる。
農家の建物を描いてみれば、屋根の三角や壁の四角を妙に印象的に描く。
牛を描いてみれば、顔や角には重きを置かず、胴体が画面中央にドンと陣取ってしまう。
彼は物の表面というものに興味があったのだろうか。
その後神智学にかなり傾倒したらしいが、その神智学というのは本当に難しい。
神智学は宗教ではありません。神聖な知識または神聖な科学です。また、神智学はあらゆる宗教、真理のエッセンスです。その真理の一滴があらゆる宗教の基礎となっています。比喩的に言いますと、この世の宗教はプリズムによって分解された7色の光のどれかです。それぞれの色の光は、その色の違いによって互いに攻撃しあったり、偽物だとののしったり、無視したりします。しかし、人間の認識が成長するにつれ、色のついた光は次第に色あせ、最後には永遠の真理である白光を見るようになるでしょう。それこそが神智学です。
(神智学の教え | 神智学協会より)
以前神智学と芸術について調べた事があったけれど、さっぱりわからず降参した。
この作品が「神智学の影響がありました」といわれる、例えばとても愛らしい《少女の肖像》などだけれど、どこがどう影響があるのか凡人には良く分からない。
その後、キュビスムの影響を受けた作品や「デ・ステイル」に参加したりと様々な経験を経て、あの直線と四角のコンポジションに辿り着いたようだ。
抽象画の中では音や熱を感じるようなカンディンスキーたちに比べて、モンドリアンは「冷たい抽象」と呼ばれる。
本展に出展された《ドンブルグの教会塔》や《砂丘》の連作を見ているとモンドリアンの興味は、何かを見て感情がフツフツと沸き上がってくるというタイプでなく、「これは何でできているんだろう」的な分析が先に来るタイプの人なんだろうなと思った。
つまりは「理論派」とか言われる理屈っぽいタイプの人なのかもしれないけれど、私的には、そういうタイプの人の頭の中って割と興味あるな。