ベルギー奇想の系譜 @Bunkamura ザ・ミュージアム
渋谷Bunkamuraで、「ベルギー奇想の系譜」を観てきました。
6月にバベルの塔を観に行ったばかりですから、飽きてしまうかな、と思いきや。ワクワクドキドキ楽しい展覧会でした。
ボスを発端として、いったいベルギーはどうしちゃったのだろうと思います。
ヨーロッパの王族たちはこぞってボスの作品を所望したようですが、当時の王様たちは案外保守的ではなかったのでしょうか。
《トゥヌグダルスの幻視》ヒエロニムス・ボス工房 1490-1500年頃
口がラッパみたいで体が玉子型。どんな発想力でこんな生き物が出来上がったのでしょう。
左下のトゥヌグダルスが異界の罪を観て回り、そののち悔悛したという物語を表しているらしいのですが、あまりにユーモラスで罪の恐ろしさをあまり感じません。こんなので道徳的効果があったのでしょうか。
「七つの大罪」シリーズ《邪淫》ピーテル・ブリューゲル(父₎原画1558年頃
「七つの大罪」シリーズと「七つの徳目」シリーズがあります。
意識的な対にしているわけではないらしいですが、それぞれ7つずつの作品があります。
今回は大罪は7点、徳目は4点来ていましたが、圧倒的に大罪シリーズの方が面白いですね。人間にとって罪ほど、悲しく、哀れで、滑稽で魅力的なものはないということでしょうか。
今回の展覧会は、ボスから始まって、ブリューゲル、ベルギー象徴派、表現主義、そしてシュルレアリスムから現代までと、ベルギーのおよそ500年間の奇想をたどるものでした。
《反逆天使と戦う大天使聖ミカエル》ペーテル・パウル・ルーベンス(原画)1621年
フランドルと言えば、フランダースの犬でおなじみのルーベンス。
これもかなり悪魔的な描写です。筋肉モコモコ、ひねりポーズがミケランジェロの影響があるように感じます。
ロップスはほかにもミレーの絵をもじった「毒麦の種を蒔くサタン」など独特のおどろおどろしさの中に美とエロスを感じるものがあり、好きになりました。
最近、フランドル絵画が取り上げられる機会が増えました。
偉い人をお定まりのポーズで描いた肖像画より、このような奇想の作品の数々はより人間の深淵に迫ったもので現代の私たちの感性に訴えかけるものが多いからしれません。