アルテミジア・ジェンティレスキ
女性画家
芸術のあらゆる分野において、女性作家というのは数少ないものです。美術の世界でも例外ではありません。
今でこそ女性の活躍を表すいくつかの指数の中で、女性議員の割合や女性重役の割合を数値化しているけれど、長い美術の歴史で女性作家の占める割合を数値化したら、きっと1%にも満たないのではないかしら。
現代の美術界では、女性作家は珍しくないですが、それもここ50年くらいのこと。
そのせいか、かつての女性作家の生涯は多くの逸話を持つ人が多い。それだけ苦難や偏見の中で生きてきたといえるのかもしれません。
アルテミジア・ジェンティレスキ
美術の通史を学ぶ前は、まったくその存在すらも知らなかったアルテミジア・ジェンティレスキ。名前が難しくてすぐ忘れてしまうのですが、17世紀のイタリア・カラヴァッジョ派の女性画家。
父はオラツィオ・ジェンティレツキで、カラヴァッジョとも交流があった画家。第1子だったアルテミジアは父の工房の中でも、弟たちよりも頭抜けて技量があったらしい。
父の知人であるアゴスティーノ・タッシに師事をすることになります。ところがこのタッシという人物、どうもいかがわしい感じの人。出自を偽ったり、多くの女性から強姦罪で訴えらえています。
アルテミジアも被害者の一人であったようで、父が教会に訴えます。ところがアルテミジアは被害者であるのに、取り調べや検査などで精神的身体的にかなり苦痛を味わわされます。それは拷問とも呼べるもので第2の強姦のようだったとも伝えれています。
そういった経験から、アルテミジアの作品は男性社会への反発や批判が強く表れているといわれています。
《ホルフェルネスの首を切るユーディット》1612年-1613年
カラヴァッジョばりの凄惨な絵ですね。いや、それ以上かもしれません。腕まくりして女性が2人がかりで首を斬っているさまは、彼女自身の復讐の気持ちが表れているように思えてなりません。